野球肘
野球肘について
野球肘は大きく分けて二つのものに分類されます。
①内側が痛くなる内側型野球肘、②外側が痛くなる外側型野球肘。
どちらも重症になれば“剥離骨折”や“離断性骨軟骨炎”といって、重症度の高いものに移行してしまいます。
出来るだけ
・早く発見する
・早く治療する
・肘に負担をかけない体を作る
・負担をかけない投球フォームを身につける
これらがとても大切になってきます。
①内側型では、肘の内側の筋肉が付着する部分が、繰り返し引っ張られ傷害を作ります。
最悪の場合、骨の表面を引き剥がしてしまい、“剥離骨折”を引き起こします。
②外側型では、初期はボールを投げる瞬間や練習後などに、ズキズキとした痛みと、曲げ伸ばしの制限が強く現れます。
軟骨が骨から分離してしまい、関節ネズミ「関節遊離軟骨」を作ってしまうと、離断性骨軟骨炎という重大な傷害になります。
初期には、外側よりも肘の後ろ側に痛みが現れる事が多くあるので、注意深く痛みの場所を観察することが大切です。
また欠けてしまった軟骨が、関節の中で挟み込まれてガチっと固定されてしまい、一時的に肘を曲げることも伸ばすこともできなくなってしまう【ロッキング】といった症状が見られる方もいます。
野球肘は、①内側型②外側型に関わらず、重度のものに進行してしまった場合、三カ月から半年、手術を必要とした場合は、約1年ほどの投球禁止期間が必要になります。
一生懸命に練習に打ち込んでいる子供さんほど、この野球ができない期間はとても辛いものです。
子供の痛みの訴えや様子を、親御さんも注意深く観察してあげてください。
野球肘の原因
重症化してしまう原因は
・ボールの投げ過ぎ
・負担のかかる投球フォーム
・柔軟性の低下
・手投げ
など様々な問題があります。
投手の球数制限などが、野球界で取りあげられていますが、一番に考えてほしいことは
【肘に 負担がかかる 動き(フォーム)】になってしまっていることです。
いくら投球数を制限したところで、負担のかかる動きをしている限り、その選手は必ず肘を壊してしまいます。
【負担の少ない動作】を身に付けたうえで、投球数を減らすからこそ、成長過程での肘や肩の故障を減らしていけるのです。
【当院での治療方法】
負担のかかる動きを作ってしまう要因として【身体的な原因】【動作的な原因】の二つが考えられます。
【身体的な原因】として
・肘と腕
・肩と肩甲骨
・背骨と肋骨
・骨盤と股関節などの関節が正常に動いているか。
投球というのは、「全身の連動」で行っているものなのです。
そのため患部だけ診ていては、完治することはありません。
特に肘に問題を抱えている子の多くは、必ずと言っていいほど「肩の可動域低下」も起こしています。
肩の可動域が低下する理由として、肩甲骨の動きが悪いことがあげられます。
肩甲骨が動かない子は、背骨や肋骨が動きにくく固まっている事が多く、問題は一部に限らないことが多いです。
野球肘になった子は、全身の関節が動かしにくい状態なので、野球肩を発症するリスクも高まります。
初めは問題なく投げられていた子供でも、肩や肘、背骨に癒着が残っていくと、本人も気付かないレベルで、少しずつ関節の動きが悪くなっていきます。
一例として…
画像にもあるように投球時の肘の高さというのは、【肩-肩-肘】を結んだ高さにあることが負担のかからない肘のポジションになります。
そのため、肘が下がった状態で投げていると肘を痛める原因になってしまいます。
”では肘を上げれば問題が解決するのか?”
答えは、NOです。
【意識的に肘を上げたからといって、肘への負担が軽減するわけではないのです。】
肩や肩甲骨の可動域低下が起こってしまい肘が挙がりにくい状態になっている場合は、まず可動域を改善しなければいけません。
このように「肘が下がっている現象」を見つけても、フォームを意識的に変える前に、身体的な原因部位を改善しなければ、解決には至らないのです。
チーム事情による影響
学童期に重度の野球肘を作ってしまいやすい理由は、選手だけの問題ではないのも実際です。
小中学生でピッチャーをするような選手は、どうしてもチームの中で野球が上手な子がピッチャーを任されがちです。
他に投げられる子(試合を作れる子)がおらず、その子が毎試合登板することになり、一人の選手に負担を強いられることになります。
その結果、肘の障害を作り中には小学生の間に手術をして中学生以降野球人生に大きな影響を引き起こしてしまうことにも繋がります。
そうならないためにもチームとして
・ピッチャーを複数人用意出来るチーム作り
・選手の異常に気付く
・選手が不調を訴えやすい指導者との関係作り
・チームとしてケガを防止するための身体作りを含めた練習
このように取り巻く環境の影響も野球肘を減らすためには大切になってきます。
また投げるという動作は、どれだけ上手く投げても肩の後面にストレスをかけてしまうため、投球機会が多い選手は、必ず投げた後のセルフケアをしっかりと行なっておく必要もあります。